【保護者向けコラム】子どもが動き出すために必要な「土台」とは

子どもが動き出すために必要な「土台」とは
~マズローの欲求5段階説から考える、不登校支援の視点~
「このまま、うちの子はずっとこの状態なんじゃないか」
「何かしなきゃ、と焦るけれど、どうしていいかわからない」
不登校の子どもを見守る保護者の方が、こうした思いに包まれるのは、決して珍しいことではありません。
ですが、その“動けない”には、実はきちんとした理由があります。
心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」では、人間の行動は次のような5つの階層的な欲求に基づいているとされています。
- 生理的欲求(食事・睡眠など)
- 安全の欲求(安心・安定・身の安全)
- 所属と愛の欲求(人とのつながり)
- 承認欲求(認められたい)
- 自己実現の欲求(なりたい自分になる)
不登校の子どもは、実はこのうち**「安全の欲求」や「所属の欲求」が満たされていない**状態にあることが多いのです。
「学校に行けない」「クラスに居場所がない」「誰かに否定された気がする」
それらは子どもの中で、“ここは危険な場所”という感覚につながり、心が自己防衛モードになってしまうのです。
つまり、
「勉強しなさい」「将来のことを考えなさい」
といった言葉が届かないのは、子どもが「その前の段階」にいるから。
この“土台”が満たされていないと、上の段階にある目標(勉強・登校・進路など)を考える余裕は、なかなか生まれません。
大切なのは、まず子どもにとって**「安全な場所」「信頼できる人間関係」**を回復させること。
「怒られない」「比べられない」「否定されない」
そんな場所で過ごすことで、少しずつエネルギーは戻ってきます。
保護者の方が、日々の関わりで“安心の土台”を築いていることに、子どもは言葉にせずとも救われています。
今日、子どもがあなたの隣にいるということ。
それはすでに、“最初の階段”を登っている証拠かもしれません。
