【保護者向けコラム】制作活動がセラピー効果を生むって本当?アートセラピーについて

保護者向けコラム
制作活動がセラピー効果を生むって本当?アートセラピーについて

学校に行きづらい状況にあるお子さまを見ていると、「気分転換になることをさせてあげたい」「少しでも心が落ち着く時間を作ってあげたい」と感じる保護者の方も多いのではないでしょうか。そのようなときに注目されているのが、制作活動が持つ心理的な効果です。
絵を描くことや、ものを作ることには、心を落ち着かせたり、気持ちを整理したりする働きがあると考えられています。こうした芸術活動を心理的な支援として活用する方法の一つが、アートセラピー(芸術療法)です。
アートセラピーとは、絵画や工作、粘土、手芸などの制作活動を通して、自分の気持ちを表現したり、心理的な安定を促したりする支援方法です。言葉で気持ちを説明することが難しいときでも、色や形、作品を通して内面を表現することができるため、子どもや思春期の年代にも取り入れられることが多いアプローチです。

特に学校に行きづらい状況にある子どもは、「なぜつらいのか自分でもよく分からない」「うまく説明できない」という思いを抱えていることがあります。そのようなとき、制作活動は言葉に頼らない表現の方法として役立つことがあります。自由に絵を描いたり、好きな色で塗ったり、手を動かして何かを作ったりする活動の中で、自然と気持ちが落ち着いてくることも少なくありません。制作に集中している時間は、日常の不安や考えごとから少し距離を置く時間にもなり、心をリフレッシュさせる効果が期待できます。
また、制作活動には達成感を得やすいという特徴もあります。学校生活の中では、テストや成績などによって結果が評価される場面が多くありますが、制作活動には必ずしも「正解」があるわけではありません。自分なりに作った作品が完成したとき、「できた」という感覚を得ることができます。こうした経験は、子どもの自己肯定感を支える大切な体験になります。
さらに、制作活動は集中する力を育てる時間にもなります。手を動かしながら作品づくりに集中しているとき、人は自然と目の前の作業に意識を向けています。心理学では、このように一つの活動に没頭する時間は、ストレスの軽減や心の安定につながることがあると考えられています。
制作活動は、家庭の中でも気軽に取り入れることができます。塗り絵をしたり、簡単な工作をしたり、好きな材料で何かを作ってみたりするだけでも十分です。大切なのは上手に作ることではなく、安心して手を動かす時間を持つことです。また、作品が完成したときには結果を評価するのではなく、「楽しそうに作っていたね」「この色きれいだね」など、作る過程に目を向けた声かけをすることが大切です。

こうした制作活動の大切さは、教育の現場でも注目されています。東京大志学園のファーストステッププラン池袋校では、制作活動を中心とした通学プログラムを取り入れています。制作活動を通して、安心できる環境の中で手を動かす時間をつくり、子どもたちの自己肯定感を高めたり、心を落ち着かせたりする体験を大切にしています。
例えば、通学プログラムでは調理実習などの活動も行っています。みんなで簡単な料理づくりに取り組み、食材を切ったり盛り付けをしたりする中で、「自分にもできた」という小さな成功体験を積み重ねていきます。また、季節の工作ではその時期ならではのテーマを取り入れながら作品づくりを行います。手を動かしてものづくりに集中する時間は気持ちを落ち着かせるきっかけにもなり、完成した作品を見ることで自然と達成感や満足感を感じることができます。このような活動は、勉強とは違った形で子どもたちが安心して参加できる時間となり、自分のペースで過ごしながら自信を育てていく機会にもなっています。
また、遠方に住んでいる生徒でも同じような体験ができるように、オンラインでの制作活動も行っています。オンラインの折り紙講座では、講師の手元を画面で見ながら全国の生徒が同じ作品を一緒に作ることができます。離れた場所にいても同じ活動を共有することで、安心感や一体感を感じることができます。

さらに、Zoomで行われる特別講座では、ビーズなどの材料を事前に郵送し、全国の会員同士がオンラインでつながりながら作品づくりを行う機会もあります。制作をしながら「どんな色を選んだの?」「きれいにできたね」といったやり取りが自然に生まれ、ものづくりを通してコミュニケーションが広がっていきます。
このように制作活動は、単なる趣味の時間ではなく、心を整えたり、自信を育てたりする大切な体験になることがあります。学校に行きづらい時間の中でも、安心して手を動かし、何かを作り上げる経験は、子どもの心をゆっくりと支えていく力を持っています。
日常の中で制作活動の時間を少し取り入れることは、お子さまにとって「安心して自分らしく過ごせる時間」を増やすことにつながります。そうした小さな積み重ねが、やがて自信や前向きな気持ちを育てていくのかもしれません。

